著者:アリソン・マレー
訳者:熊谷圭知・内藤耕・葉倩瑋
ジャンル:社会地理学/文化人類学/地域研究
四六判(タテ188mm×ヨコ128mm) 上製本 283頁
定価:本体2,500円+税
ISBN 978-4-89618-011-9 C0030
1994年6月1日発行
装幀:菊地信義
若き地理学者によるフィールドワークの傑作。
ジャカルタの路地裏、カンポン。朝夕の路上市や、家の窓で、野菜売りや食べ物屋台を営む女たち。商売は機知やユーモアがものをいい、住民たちに世間話の場を与える。限られた時間と空間に、すべてを収容し、自給・自律する「女の空間」。ここにも、容赦ない開発と消費主義の波が押し寄せる。生き残りを賭けた生活と意識の変容を、露天商や売春婦たちと暮らして、女の視点から、共感をもって描き出す。
「日本語版へのことば」より
この本を書いている間も、本が最初に出版されてからも、ジャカルタは急速な勢いで成長し、変化し続けています。本書で描かれた場所や人びとや細かい事柄の多くは、すでに消えてなくなっています。しかし、今もなお同じような出来事が、ジャカルタやその他の多くの都市で起こっていることでしょう。この本の基本は、都市の変容を底辺から見ることにあります。また、開発が人びとの日常生活と生計にどのような影響を及ぼし、同時に、開発が人びとからどのような影響を受けたのかを見ることにあります。日本の読者の方々が、ここに登場するジャカルタの女たちの生き方に、少しでも興味をもち、かかわりを見いだしてくださるようにと願っています。
アリソン・マレー
▶︎目次
はじめに 「アイ・キャント・ストップ・ラヴィング・ユー」
1 真理と幻想
「イブ(母)」のイメージ
インドネシアの真理体制
階級的セクシュアリティ
日常生活と戦略的批評
2 大ジャカルタ夢物語
都市幻想
都市のカンポン
インフォーマルな就業
ジャカルタ首都特別州の権力と政策
地域行政
3 マンガライの真理と死
マンガライの生活と時間
真理と死
階級区分/表通りと路地裏
4 露天商の女たち
女・生産・社会的再生産
路上市と日常生活
職場の女露天商
ワルテグ・街の信用・社会的地位
真夜中になっても/時間と空間の収容
5 生活様式としてのアナーキー
カンポンのコミュニティ
世帯の生き残り戦略
母方中心性・権力・利潤
移住者のネットワーク
女たちのネットワーク
インフォーマル・セクターのネットワーク
コミュニティ・階級・アナーキー
6 都市の幻滅
露天商排斥・ベチャ排斥
カンポンの衰退と解体
職場のよい娘たち
7 パンクと売春婦
盛り場の生活
売春団地と売春の病理学
ブロックMの夜の生活
家と職場のビンタン・ガール
翔んでる女の子
8 葬られるか、成り上がるか
商品化された空間・商品化された女たち
都市のシミュレーション
性と階級の矛盾
態度
おわりに 「ノーマネー、ノーハネー」
▶︎著者プロフィール(経歴は刊行時のものです)
アリソン・マレー(Alison Murray)
1961年、キプロスのアクロティリ英国空軍基地で生まれ、英国のバーミンガムで育った。オックスフォード大学、およびオーストラリア国立大学(キャンベラ)で人文地理学を専攻した。その間、インドネシアに通算して3年間生活し、東南アジアを広く旅している。
この本は初めての著作で、学位論文をもとに、シドニー大学研究員時代に書かれたものである。シドニーにあるセックス・ワーカーの団体でエイズ教育に携わり、現在はオーストラリア国立大学太平洋アジア学研究所人文地理学科所属の研究員。
▶︎訳者プロフィール
熊谷圭知 (くまがい けいち)
1954年、東京都生まれ。お茶の水女子大学名誉教授。専門は社会文化地理学、オセアニア(パプアニューギニア)の地域研究、ジェンダー研究(男性性)。
内藤 耕(ないとう たがやす)
1962年、静岡県生まれ。東海大学文化社会学部教授。専門はインドネシア都市研究、国際コミュニケーション論。
葉 倩瑋(よう せいい)(経歴は刊行時のものです)
1963年、大阪府生まれ。オーストラリア国立大学博士課程。専門は都市地理学。